こんにちは。
ナースの独り言です。
患者さんは不安になりやすいもの・・
そうはわかっていても、度が過ぎるってこともある。
時々いるんですよね。
30分かけて話を聞いても、不安で不安で仕方ない人・・・。
その度が過ぎた不安に満ちた患者さんの顔をみる度に、
私はある女性を毎回思い出すのだ。
10年以上前、、、
大学病院の外来に勤めていた時に、毎週同じ時間に来ていた女性のことを。
彼女は、60代には見えないくらい若くて、綺麗で、着ているもの、話している言葉も品がよく、裕福な生活をされているのだろうと想像できる方だった。
ただ、彼女はその美しい顔を歪めながら毎週やって来て、同じことを訴えるのだ。
胃の状態がよくなりません。
食欲もあまりないし、
やはり私は癌だと思うのです。
先生が、驚きとあきらめの混じったような顔をする。
採血、レントゲン、CT、胃カメラ、大腸カメラ、、、
もう、やれる検査は全てした。
薬も色々試した。
精神安定剤は前から飲んでるが、本人曰く効き目がないのでやめてしまったと。
とりあえず医師は真摯に話を聞き、全くもって心配する所見はない、問題ないと説明する。
外来に沢山の患者を待たせて、30分くらい話を聞いたにも関わらず、彼女は安堵することなく、絶望感に満ちた顔で帰っていく。
まるで癌告知された患者のような顔をして。
これを毎週繰り返す。
この人は、自分が癌になることを望んでいるようにしか見えないけれど、癌になるまで通うのだろうか。
ある時、本当の本当に癌になって、癌だと言われた時に、この人は晴れ晴れするのだろうか?
幸せになるのだろうか??
満たされるのだろうか?
納得するのだろうか?
私は外来にいた2年間、ずっと疑問だった。
(心療内科も勧めたけど、たしか拒否して行かなかった)
私が大学病院をやめてしまったので、彼女が今どうしているのかはわからないが、とても印象深い患者の1人であった。
人は暇だと不安になる。
そして、不安は人を惑わせる。
側から見るととても豊かな生活をしているように見えるのに、人より余っている時間を全て、自分の不安や妄想に費やしてしまっている人もいる。
不安を選択しているから、お望み通りの不安で満ちた人生になってしまっている、、そんな気がするのだ。
さて、これから私たちはどう生きるのか。
コロだけでなくいろいろな騒動の中で、
それを問われているのは確かだ。
不安な時は不安でもいい。
悲しい時は悲しいでいい。
でもそれからどうしたいのか。
私はどうしたいのか。